クレオパトラの宝石箱はエメラルドで満たされていたに相違ないと思います。なぜなら美しいエジプトの女王はエメラルドの豊富な源となった伝統的な鉱山を所有していました。クレオパトラの鉱山は今でも存在しているといいますが、何十数年前フランスの山師がこの鉱山のトンネルを探検した結果、鉱山では宝石は見つからず、取り尽くされていたといいます。ルビーに次いでエメラルドは珍しく価値のある宝石です。コランダムをルビーにしている同じ化学不純物が普通のベリルをエメラルドにしています。わずかの量の酸化クロムが一つの鉱物を赤くし、又ほかの物を緑色にすることは自然の驚異です。クロムがコランダムとベリルとの異なった原子配置の中にまじり合って異なった波長を吸収するということです。クロムの入ったベリルは赤色のほとんどを吸収しますが、緑色は吸収しません。私たちが見ている宝石の色は吸収されずに残った波長の光を見ていることになります。
エメラルドは見ていて非常に心を静めてくれる石です。古代ローマの宝石研磨師たちは自分たちの目を休めるために机の上に置いていたということです。ローマ皇帝のネロはエメラルドグラスを通して剣闘士の戦いを見物したと言われています。メガネに使えるほどの大きさの傷のないエメラルドを得ることは難しかったと思います。エメラルド以外のベリルの結晶は時には非常に大きく成長しますがエメラルドは小さいのが普通と言われています。ベリルはアルミニウム、ケイ素、酸素、及び産業で広く使われている軽金属のベリリウムよりなる化合物です。

エメリング